韓国歴史ドラマに頻出する「側室(そくしつ)」たち。
名前の後に「嬪」や「淑媛」などの称号がついていて、なんとなく偉そうだったり、若そうだったり…でも、それぞれ何が違うの?と気になる方も多いはず。
この記事では、朝鮮王朝における側室の身分制度(品階制)を正一品から従四品以下まで網羅的に解説。
ドラマでよく見る称号の意味、昇進ルート、実在人物の例まで含めて、どこよりも詳しく紹介します!
側室とは?正室とは違う「品階制度」による身分
朝鮮王朝では、王の妻となる女性には大きく分けて2種類ありました。
- 正室:王妃(ワンビ) … 1人のみ。国家が定めた正妻。
- 側室:嬪・貴人・淑媛など … 王の寵愛により迎えられる「次位の妻たち」
この側室たちは、「品階(ひんかい)」と呼ばれる位階制度によって厳密に序列化されていました。
つまり、すべての側室には「ランク」があり、どの品階にいるかで権限・待遇・呼び方が異なります。
以下では、その階級をわかりやすく一覧にし、ひとつずつ解説していきます。
側室の階級(品階)一覧表
品階 | 称号 | ハングル | 備考・特徴 |
---|---|---|---|
正一品 | 嬪(ピン) | 빈 | 側室の最高位。王妃に次ぐ地位。 |
従一品 | 貴人(クィイン) | 귀인 | 高位の側室。嬪に次ぐ権威あり。 |
正二品 | 昭儀(ソウィ) | 소의 | 宮中でよく登場する実力者。 |
従二品 | 淑儀(スギ) | 숙의 | 中堅クラスの側室。 |
正三品 | 昭容(ソヨン) | 소용 | 若手・新任クラス。 |
従三品 | 淑媛(スグォン) | 숙원 | 初期の呼称。ドラマにも頻出。 |
正四品 | 昭媛(ソウォン) | 소원 | 昇進前のスタート地点。 |
従四品以下 | 承恩(スンウン)など | 승은 | 王の寵愛を受けたばかりの女性。 |
※側室は基本的に正四品以上で認定されることが多く、従四品以下は仮の呼称または一時的な身分とされることがあります。
各階級の詳細解説
正一品:嬪(빈/ピン)
「嬪」は側室の中で最高ランクの称号。王妃に次ぐ権威を持ち、他の側室たちを統括する立場になることもあります。
- 正式な名称の例:淑嬪(スクピン)・貞嬪(チョンビン)など
- 品格と礼儀、家柄、功績(王子出産など)が評価され昇進
- 王妃がいない場合、一時的に宮中を取り仕切ることも
実在例:淑嬪崔氏(スクピン・チェシ)…『トンイ』のモデル。英祖の母。
従一品:貴人(귀인/クィイン)
「貴人」は、嬪に次ぐ高位の側室で、側室グループ内では中核的存在。
寵愛や出産によって嬪に昇進するための「前段階」とも言えます。
- 寵愛を集め、後宮内で影響力を持つ
- 「嬪」と違い、正式な部署や業務は任されにくいが、地位は高い
- 他の側室より呼び方が敬意を含む
登場ドラマ例:『赤い袖先』に登場する宜嬪成氏が嬪になる前は「貴人」だった可能性あり
正二品:昭儀(소의/ソウィ)
「昭儀」は中上位に位置する側室。名前に「昭」がつくことから、光を示す・明るく照らすという意味を含みます。
- 経験ある側室として、後輩の育成にも関与
- 御前の場で意見を述べることも許される
- 高い礼法と徳が求められる
二品:淑儀(숙의/スギ)
「淑儀」は「淑(しとやか)」という字を含むことから、柔和で徳のある女性としての評価を受けた者に与えられます。
- 王の寵愛を受けた証
- 昇進の途中段階として比較的多く見られる
- ドラマでは、嬪に昇進できずに終わるケースも多い
正三品:昭容(소용/ソヨン)
「昭容」は、昭儀の下位ランクで、比較的若い側室が該当。
ここまで来ると、正式に「内命婦」のメンバーとして認められます。
- 宮中での礼儀作法や業務の習得が求められる
- 他の側室の補佐をすることも
従三品:淑媛(숙원/スグォン)
「淑媛」は、ドラマで最もよく見かける側室称号のひとつ。
登場初期の側室キャラがよくこの呼称を持っています。
- 側室の初期段階で与えられる称号
- 王の子を産めば昇進のチャンスあり
- 若く、家柄が高くないケースでも選ばれる
実在例:張禧嬪(チャン・ヒビン)は、最初「淑媛」から出発して嬪に昇進した
正四品:昭媛(소원/ソウォン)
「昭媛」は、内命婦に正式に登録される一歩手前の階級。
寵愛を受けたことにより初めて与えられる公式の称号の一つです。
- 昇進の入口として重要なポジション
- 一定の教育・選考過程がある
従四品以下:承恩(승은/スンウン)など
「承恩」とは、文字通り「王の恩寵を受けた女性」を意味します。
これは正式な品階ではなく、王が一時的に寵愛した女性に用いられる仮称です。
- 宮中の女官・楽人などが一夜限りで寵愛された場合にも使用
- そのまま昇進しなければ「側室」とは見なされない
- 一方で、子どもを産めば昇進対象に
側室の昇進ルートと評価基準
側室は、原則として以下のような条件で昇進していきます。
- 王の寵愛を長期間受けること
- 王子または姫を出産する(特に男子)
- 礼法・徳行・容貌・家柄などの評価
- 宮中政治での立場や後援の存在
また、王妃の空位期間や特定の政変後には、側室の昇進が急激に進むこともありました。
側室たちの待遇・呼称・居住空間
称号によって呼び方が変わる
側室にはそれぞれ品階に応じた「称号」が与えられており、
宮中ではこの称号に「媽媽(ママ)」を付けて呼ぶのが慣例でした。
たとえば「淑嬪 崔氏(スクピン・チェシ)」であれば、
内命婦や下級の女官からは「淑嬪媽媽(スクピン ママ)」と呼ばれ、
これは王妃の「媽媽」と同様に敬意と服従の表現です。
この呼び名の違いにより、
呼ばれる側は自らの地位を再確認し、
呼ぶ側は身分差を意識して接するため、
宮中の人間関係や礼儀作法の“基準”となる呼称制度でもありました。
住む場所も階級で異なる
側室の住まいも、その品階によって大きく異なりました。
高位の側室(貴人や嬪など)は、王妃に次ぐ存在として「別殿(ピョルジョン)」と呼ばれる
独立した建物に住まうことがありました。これは専用の空間で、使用人や尚宮なども配置される特別待遇です。
一方で、下位の側室や、まだ正式な品階を持たない女性(承恩など)は、
王のいる正殿や東宮(世子が住む場所)近くの一角に間借りする形で住むこともあります。
ドラマでは、住む部屋の大きさや装飾、付き人の数からその人物の立場が表現されていることも多く、
視覚的にも「格差」を演出する演出ポイントです。
衣服や装飾品の格も決まっていた
側室たちの衣服の色や髪飾りの種類、装身具も、細かく品階によって定められていました。
- 嬪(ピン)以上の高位側室は、赤いチマ(スカート)を着用することができ、
これは王妃に次ぐ特権的な色とされていました。 - 貴人(キイン)以下の中下位階級では、淡い色(薄桃・水色・黄緑など)が基本。
あくまで「目立ちすぎない」よう、格式を守る必要がありました。
また、髪に挿す簪(チョルピン)や玉簪(オクチョル)、耳飾り、帯の飾りなどにも細かい決まりがあり、
ドラマでは「側室が許されていない簪を使っている!」といった描写がトラブルの伏線になることも。
衣装や装飾は、女性の地位そのものを象徴する「視覚的な階級表現」でもあったのです。
有名な側室とその階級(ドラマ付き)
人物名 | 階級 | ドラマ登場 | 備考 |
---|---|---|---|
淑嬪 崔氏 (スクピン・チェシ/숙빈 최씨) | 嬪(ピン/빈)=正一品 | 『トンイ』 | 英祖の母、低身分出身 |
張禧嬪 (チャン・ヒビン/장희빈) | 嬪(ピン/빈)→ 王妃(ワンビ/왕비) | 『チャン・ヒビン』 『トンイ』 | 唯一側室から王妃に |
敬嬪 朴氏 (キョンビン・パクシ/경빈 박씨) | 嬪(ピン/빈)=正一品 | 『チャングムの誓い』 | 正祖の母 |
宜嬪 成氏 (ウィビン・ソンシ/의빈 성씨) | 嬪(ピン/빈)=正一品 | 『赤い袖先』 | 純祖の生母、波乱の生涯 |
まとめ:階級を知ると、ドラマの女性たちの立場が見えてくる
側室の称号は、単なる“名前”ではなく、
彼女たちの生き様や宮中での立ち位置を示すリアルなランクでした。
これを知っていると、ドラマの中での言動の意味、
立ち振る舞いの重み、人間関係の複雑さがぐっと深まります。
今後の視聴に活かせるよう、韓ドラ歴史ノートではさらに各人物ごとの解説記事や、女官との関係性なども発信していきます!