韓国の時代劇(史劇)を観ていると、登場人物たちが互いを「媽媽(ママ)」「ナウリ」「チョナ」「テグン」などと呼び合う場面がよく出てきますよね。
でも、初めて見る人にとっては、
「誰が誰をどう呼んでるの?」「どういう意味?」と混乱することも。
この記事では、韓ドラ初心者〜中級者の方に向けて、
時代劇に出てくる「呼び方(敬称・尊称)」をわかりやすく一覧&深掘り解説します。
宮中・王族の敬称まとめ
朝鮮王朝では、身分によって明確な呼称ルールが存在していました。
特に宮中では、この呼び方によって“誰が誰より上なのか”がはっきり示されていました。
媽媽(ママ/아아)
王妃や側室、王女、上級女官などに使われる女性に対する敬称です。
たとえば王妃は「中殿媽媽(チュンジョン ママ)」、高位側室なら「淑嬪媽媽(スクピン ママ)」、尚宮なら「尚宮媽媽(サングン ママ)」と呼ばれます。
この「媽媽」は日本語で言う「〜さま」に近く、下位の者が上位の女性に対して敬意を表すときに使う呼び名です。
なお、「ママ」と聞いて「母親」と連想しがちですが、日本語の「ママ」とはまったくの別物。時代劇では重要な身分表現なので、混同しないように注意が必要です。
チョナ(전하/殿下)
「チョナ」は王に対する最上級の敬称で、「殿下」と訳されます。臣下や女官が王に直接話しかけるときは、必ずこの「チョナ」を用います。
「チョナ、本日はお出ましくださり……」といったセリフは時代劇でよく聞かれます。
ここで気をつけたいのが、似た呼び方である「전하(チョナ:殿下)」と「주상 전하(チュサン チョナ:主上殿下)」の違いです。
「전하(チョナ)」は本来、王だけでなく王子などの王族に使われることもある「敬称の格」を表す語であり、幅広く使われます。
一方で「주상 전하(チュサン チョナ)」は「主上=王」を特定する呼び名で、儒教的格式を強く意識した言い方。より尊崇の念を込めた、王限定の最大級の敬称とされます。
テグン(대군/大君)
「テグン」は、王妃が産んだ王子に与えられる称号です。
朝鮮王朝では、王子といえど出自が非常に重要であり、正室(王妃)から生まれた王子は「대군(テグン/大君)」と呼ばれ、正統な王族として高い身分を持ちました。
一方で、側室から生まれた王子は「군(クン/君)」と呼ばれ、同じ王子であっても明確に身分が異なります。
この区別はドラマ内でも頻繁に描かれ、王位継承をめぐる争いや母親同士の確執などに発展することも多い重要な設定要素です。
セジャ(세자/世子)とセジャチョハ(세자저하)
「セジャ」は、次の王となる王子、すなわち世子(皇太子)を意味します。
王の子どもすべてが自動的に「セジャ」になるわけではなく、朝廷の決定や王の意思により「世子」に選ばれた者だけがそう呼ばれます。
「세자저하(セジャチョハ)」は、「世子 邸下」の意味で、臣下や女官が世子に対して使う敬称です。
つまり、「セジャ」はその身分、「セジャチョハ」はその身分の人に対しての呼び方、と考えると理解しやすいです。
ちなみに「저하(チョハ/邸下)」は、王子や世子など、王より格下ながらも王族として高位にある人物への敬称です。
公主(공주/コンジュ)と翁主(옹주/オンジュ)
女性王族にも、出自によって呼称の違いがあります。
「공주(コンジュ/公主)」は、王妃が産んだ王女に対する正式な称号です。
一方、「옹주(オンジュ/翁主)」は、側室が産んだ王女の呼び名です。
つまり、王女であっても、母親の身分によって「公主」と「翁主」という違いが設けられていたわけです。
これにより、政略結婚の格、待遇、婚礼の規模などにも違いが生まれ、ドラマ内での描写にも大きく関わってきます。
両班・士人・家臣に使われる呼称
ナウリ(나으리)とテナウリ(대나으리)
「ナウリ」は両班や高官に対する丁寧な呼び方で、庶民や女官が上位の男性を呼ぶときに使います。
さらに、その家の長男や嫡男には「テナウリ(大ナウリ)」という一段上の呼び方が使われ、家中での序列を反映しています。
宮女・女官への呼称
サングン(상궁/尚宮)とクンニョ(궁녀/宮女)
「サングン」は内命婦の中で役職を持つ上級女官で、王妃や王の身の回りの仕事を担います。
それに対し、「クンニョ」は下級の宮中女官を意味し、掃除・洗濯・雑務などを担う若い女性たちです。
まとめ:敬称を知ると人間関係が見えてくる
敬称や尊称は、朝鮮王朝の厳格な身分制度を映し出す鏡のような存在です。
「誰が誰にどのような呼び方をしているか」は、そのまま人間関係や権力構造を表しており、
韓国時代劇をより深く楽しむための大きな手がかりになります。
一見すると似ているようでも、呼び方ひとつに込められた意味を理解することで、
ドラマのセリフや立ち居振る舞いが立体的に見えてきます。
呼称は、史実とフィクションをつなぐヒント。
これからも気になった言葉があれば、ぜひひとつずつ丁寧に紐解いていきましょう。